白ゆき姫殺人事件
湊かなえ

イヤミスの三大女王の1人として人気の湊かなえさんの作品の1つである『白ゆき姫殺人事件』
このページでは『白ゆき姫殺人事件』のネタバレ、考察を含む内容解説をしていくので、
未読の方は1度読んでからご覧ください!
ネタバレを含めての簡単な内容と結末
→とある化粧品会社の美人社員(三木典子)が黒焦げの遺体で発見された。
ひょんなことから事件の糸口を掴んだ週刊誌のフリー記者(赤星雄治)は独自に捜査を進め人々への聞き込みの結果、浮き上がってきたのは三木の同僚である、城野美姫だった。
記者は化粧品会社の社員や城野の友人、地元の人達に城野がどんな人間なのかを聞いて回り、メディアでも城野が犯人だという情報が流れ始めた。世間から見ても犯人は城野だと思われたが何と真犯人は別にいた。
犯人とは三木が教育を任されていた後輩の狩野里沙子だった。
犯行理由
→本の冒頭では、里沙子は三木のことを『わたし、典子さんがどんなに素晴らしい人か語ろうと思えば一晩中続けられる自信がある。典子さんを恨む人がいるなんて考えられない』と赤星に言っている事から、読者は里沙子が犯人とは考えなかったと思います。
ではなぜ、里沙子は三木を殺害したのか、それには三木・城野がそれぞれどんな人間なのかを知る必要があります。
・三木典子
・周りからの印象
→美人で性格も良く、後輩の面倒見がいい先輩
→輝く自分でいるために人一倍、努力する人
・実際の性格や人柄
→他人の物を欲しがる『欲しがり姫』
→会社の先輩が着て来ている服を自分の方が似合っていると周りに見せつけたりと、嫉妬深く、他の人よりも自分が一番にならないと気が済まない
・城野美姫
・周りからの印象
→城野をいじめた人には不幸な事故が起こることから、呪いの力があると言われ、気味悪がられていた
→幼少期に神社に火をつけたことがあり、平気で火事を起こすような人間
・実際の性格や人柄
→人の悪口を言わず、おとなしく頭が良く、真面目な子
→不運な事故は城野に全く関係がなく、火事も親友をいじめの辛さから救おうとした結果、起こったもの
動機
→後半の城野の話から三木が嫉妬深く、他人を蹴落としてでも一番になりたい性格であると分かります。
そして国立大学を出ていて頭が良いことや、仕事のできる里沙子に自分よりも早く出世すると感じ、里沙子に陰湿な意地悪を行うようになる。
そんな里沙子は日に日にストレスが溜まっていき、社内の物を盗むようになるが、それが三木にバレてしまい、三木がネットのコミュニティサイト『マンマロー』で告発すると呟いていることを知り、里沙子はどうにかして防ぐ方法はないかと焦ります。
そんな中、三木に意地悪をされていた城野は仕返しをするべく、飲み会の日の夜、里沙子のアドバイス通りに三木を車の中で眠らせて、チケットを奪うことに成功する。
そして飲み会が終わって家に帰っている里沙子は偶然にも、自宅の駐車場で三木が車の中で眠っているのを発見し、口止めできるチャンスは今しかないと思い三木を殺してしまうのだった。
この本が伝えたかった事
→この本では、①人の話は冗談半分で聞くこと
②人間、腹の中では何を考えているか分からない(仲良くしているつもりでも、実は良く思っていなかったり)
ということが伝えたいメッセージとしてあるのではないかと思っています。
その理由として、その他の登場人物の人物像を知るとよく分かりやすいと思います。
・尾崎真智子、島田彩(城野の小学生時代の同級生)、八塚絹子(地元のおばさん)
→彼女らは城野には呪いの力があると言って、城野は悪い人物だと記者に話しています。 ここでは、人間誰しも自分の気に食わない人のことを言うときは相手のイメージが悪くなるようなことを言いがちだと思います。 そんな人間のリアルの部分を表していると思います。
・松島恵美(城野の同僚)
→彼女はゴシップ好きで情報やと言われ迷惑だと言っているが、彼女自身、噂話をするのが好きなのか、記者にありもしないことを大袈裟に話してしまい、その結果、城野が犯人だと思わせるような記事に繋がってしまう。
・篠山聡(化粧品会社の係長)
→記者には城野とは交際していないと言ったが,後に城野とは体の関係を持っていて交際していたことが分かり、事件とは大きな関係はなかったのですが彼は自分が疑われたくなかった為、、嘘の証言をしていました。
・前谷みのり(城野の大学時代の友達)
→城野の名誉を守るため記事を載せた会社に抗議文を送り、一見、友達思いの正義感あふれる人物に見えるが、実は城野を見下している所があり、自分よりも先に彼氏ができた彼女に嫉妬し、言わなくてもよい秘密や住所を無意識に暴露してしまったとも取れる。
・緑川真澄(城野の大学時代の友達)
→彼女はコミュニティサイト『マンマロー』で『GREEN_RIVER』として名乗り、城野の為にコミュニティサイトで事件の情報を集めています。
彼女も一見、友達思いの人物に見えるが、彼女がサイトで城野のフルネームを出したことでそれが世間に伝わり、城野は事件が解決した後も名前が知られ、生きづらくなってしまいます。 友達の為を思っているようで実は友達を助けている自分に酔っているだけとも取れる。
・赤星雄治(週刊誌のフリー記者)
→城野が犯人だと思われるようなことをした人物の1人
赤星は記事を面白くするために聞き込みから得た証言とは違う内容を書いたり、里沙子にネットに呟かないでと言われるも、マンマローに『RED_STAR』の名前で事件の情報を載せたりと、自分勝手でどうしようもない人物だと取れる。
自業自得であるが、後に『HARUGOBAN』というマンマローネームである谷村夕子(城野の小学生時代の親友)に個人情報を流されてしまう。
・狩野里沙子
→事件を引き起こした人物
三木の本性を知れば里沙子が可哀想だというイメージを持つが、犯行後、赤星に事件の内容をようようと話す所や、犯人は城野だと間接的に誘導している所から里沙子も同情できない人物だったと見て取れる。
マンマローアカウントの正体
本書ではTwitterを真似たマンマローというコミュニティサイトがあり、そこでは色々な人物が事件についてつぶやいています。
そんな中で人物が確定しているアカウントが5つありますので紹介していきたいと思います。
・RED_STAR
→赤星雄治
根拠
→マンマローネームが自分の名前を英語表記にしたもの
資料1に赤星雄治のページとある為
・SOKO
→狩野里沙子
根拠
→マンマローネームが自分の名前をもじってるもの
つぶやきが明らかに赤星と里沙子の会話の事を表している
・GREEN_RIVER
→緑川麻澄
根拠
→マンマローネームが自分の名前を英語表記にしたもの
資料5に緑川麻澄のページとある為
・NORI_MI
→前谷みのり
根拠
→マンマローネームが名前と似ている
みのりは週刊太陽に城野を擁護する手紙を送っており、NORI_MIも抗議文を送ったと自慢気に話していた為
・HARUGOBAN
→谷村夕子(城野が小さい頃に一緒に遊んでいた友達)
根拠
→赤星が夕子に取材しに行った際に夕子が自身のマンマローネームが『ハ』と一文字だけ言っており、さらにHARUGOBANはマンマローが事件で盛り上がっている中、赤星のつぶやきに不満があるような投稿をしていた。
子供の頃に城野に助けられた夕子が城野を擁護するつぶやきだと取れる
感想
→この本は人間のドロドロとした心の中の部分や記事、コミュニティサイトの内容など、2回以上読んで初めて理解が深まると思います。
まだ1回しか読んでない人は是非、本文の内容と週刊誌の記事、コミュニティサイトを照らし合わせながら読むことをおススメします!
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