【ネタバレ】浅倉秋成『教室が、ひとりになるまで』考察を含む内容徹底解説!

ネタバレ
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教室が、ひとりになるまで

浅倉秋成

 




推理小説や青春ミステリーとして人気の『六人の嘘つきな大学生』『俺ではない炎上』の作者である浅倉秋成さん




今回はそんな浅倉秋成さんの本格ミステリ大賞、日本推理作家協会の候補にまで選ばれた『教室が、ひとりになるまで』のネタバレ、考察を含む内容解説をおこなっていきます!!



未読の方は1度読んでからご覧下さい。






解説に移る前に、この物語の中で押さえておきたいキーワードが2つあるので、まずはそこから再確認していきましょう!



  • AB組合同のレクレーション企画

→朝の学級会で村嶋竜也が提案し、高井建友の力説により過半数の賛成が得られ、2年A組と隣のB組合同で定期的に行われている



  • 受取人

→北楓高校には常に4人の超人的な能力を持った生徒が在籍しており、能力は卒業と同時に在校生へと引き継ぐことになっている

その能力を受け取った者を『受取人』と呼ぶ



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ネタバレを含む簡単な内容と結末


垣内友弘が通う北楓高校で3人の生徒が自殺した

1人目は学校のトイレで首を吊り、2人目、3人目は校舎から飛び降りた。

『私は教室で大きな声を出しすぎました。調律される必要があります』という同じ文言の遺書を残して。

3人の死はどう見ても自殺だったが、『3人とも自殺なんかじゃない。みんなあいつに殺されたの、死神に……』と美月は言う。

そんな垣内の元に受取人に選ばれた趣旨の手紙が届き、特殊能力を用いれば3人とも殺せるんじゃないかと悟った垣内は、同じ受取人である八重樫卓と共に死神を探していくが…




まずこの事件の犯人、死神の格好で美月に接触した人物、一連の騒動を起こした人物は

1人目の死者、小早川燈花の親友であった壇優里でした



しかし、実際に優里が殺した人物は①村嶋竜也、②高井建友、③山霧こずえの3人であり、小早川燈花の死は本当に自殺でした。


本人自ら校舎から飛び降り、どこからどう見ても自殺であるこの3人を優里は一体どんな方法で殺害したのでしょうか??





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連続自殺の真相


3人を殺害した方法それは、

優里が持つ特殊能力『幻影を見せる能力』で3人を自殺に見せかけ殺したのでした。


北楓高校の受取人として作中では4人の特殊能力を持つ生徒が登場します。

1人目は、垣内友弘で『嘘を見破る能力』

2人目は、八重樫卓で『人の好き嫌いがわかる能力』

3人目は、白瀬美月で『傷を癒やす能力』

そして最後の4人目は、壇優里の『幻影を見せる能力』でした


誰しも、仲の良い友達が今にも校舎から落ちそうになっていたら、必死になって止めに行こうとするはずです。


能力の発動条件は幻影を見せたい人物に『触れること』

優里はターゲットを校舎に呼び出して相手に触れ、

①今にも落ちそうになっている友達、

②実際とは違う物の位置や距離感、を幻影で作り出してターゲット自ら飛び降りる『自殺』を作り上げたのでした。



『幻影を見せる能力』と言われても普通はそれで人を殺す事は不可能です。

しかし優里は、皮肉にも能力を使いこなし、死に追いやることに成功しました。






壇優里の犯行理由


自身の能力で3人を殺害した優里ですが、なぜこれらの行動を起こしたのでしょうか??

優里はその目的を『教室をひとりにする』事だと言っていました


ここでタイトルの複線回収です!


『教室がひとりになるまで』とは出席する人数が1人になる事ではなく、

何十人もいる教室で誰1人周りと干渉せず、ひとりでいる状態を作る事でした。



それは優里の親友の小早川燈花の願いを叶える為で


彼女はカーストでいうと一軍の立ち位置でしたが、

学校特有の同調圧力やマイノリティな意見が言えない事に抱えきれないほどのストレスを感じており、

それと同時にカースト下位の人からすると自分も加害者であると気づいた燈花は、自分が嫌になり自殺したのでした。



燈花の遺書の一文に『誰ともかかわらず、大切な人とだけ過ごせる教室が欲しかった』とありました。


中学からの親友である優里はそんな燈花の願いを叶える為に、我が物顔で自分の意見を押し付ける、彼らを殺すことを決意したのでした…






垣内の苦悩



本書の見どころとして、連続死のトリックや殺害動機に注目が行きがちですが、実は垣内に注目して読むとかなり苦しい展開が起こっていました。



1.理想と現実


→垣内はクラスのみんなを殺したいほど他人に干渉する、されるのが嫌いだった

大学生になれば一人暮らしをして、1人で授業に出て1人の時間を満喫できると思っており、

実際、大学生ののり子さんも家一日中ドラマを見たりお酒を飲んだりして、1人での生活を楽しんでいた。

しかし垣内とって理想の生活をしていたのり子さんに、サークルに入っていたりノート見せて貰うためにも友達が必要だと言われ、高校を卒業しても1人になれないことにショックを受ける。




2.理不尽な現実


→ギターを買うお金が貯まり、それなりに長く働いたバイトを辞める事を店長に伝えると罵倒され、家に帰ると母親と一人暮らしはさせないと非難される。






3.憧れていた人の現実


→1人でいることの方が心地よい垣内は、1人で自由にギターをかき鳴らすイシズミさんに憧れていた

エレキギターだと1人だと向いてなく、集団で行うバンドになる事も相まって、垣内はイシズミさんと同じギターで自由になろうとしていた。

しかし、メジャーデビューをすると言っていたイシズミさんは、周りの引き立て役のような形でエレキギターを弾くことになっていた。

汚い方法を使って。

ギターだけが自由への切符だと思っていたが、自分が憧れていた人やものはまやかしだと心を打ち砕かれる。







伏線回収



浅倉秋成さんはこの本の紹介文で『伏線の狙撃手』とあるように、伏線回収が上手なことでも有名です。



本書の伏線とは何だったのでしょうか??



伏線=前任の受取人


垣内が引き継いだ『嘘を見破る能力』には当然前任者がおり、物語のラストにそれが明らかになります。



垣内の前の受取人は『高井建友』でその前は『イシズミさん』でした。


『嘘を見破る能力』の発動条件は『体に瞬間的に強い痛みを与えること』で読み返すと、高井建友は両手を大きく叩くことで、イシズミさんは耳たぶを指で弾くことで条件を満たしていました。




特にイシズミさんに関しては、能力を失った今でもその癖が残っており、『本当にエレキとかに興味はないの?』などの質問をする際に耳を指で弾いていました。


きっと自分に幻想を抱いている垣内に対して、負い目を感じていたんだと思います。







主人公の不運な能力



垣内の『嘘を見破る能力』は良くも悪くも、相手の本心が見えてしまいます。


その能力で相手の思わぬ本心が明らかになっている場面がありました。



嘘1.担任の河村教論



『最高のクラスだと、思ってたよ』


いじめも差別もないこのクラスは自慢のクラスと言っていたが、全くの嘘だった。





嘘2.山霧こずえ


『1人でも欠けたら本当に困るんだから』


連続死が起き、レクレーション企画の準備を行う気もなくなり帰ろうとするクラスの皆に言ったセリフです。

彼女はカースト上位(陽キャ)の部類であり、本心では同じグループのメンバーだけでやりたかったのだと思います。





嘘3.八重樫卓


『信頼してたんだぞ、お前のこと。友達になれたもんだと思ってった』


八重樫が垣内に言ったセリフで、八重樫は元々『相手の好き嫌いが分かる能力』で垣内の異常な本性を見抜いていました。

人間味が大きく正義感の強い八重樫の本心が出たんだと思います。






感想


→犯人を捜すこの手のタイプで早々に犯人が分かって展開的にどうなるのかと思ったが、警察には突き出せないからトリックを暴くしかなく、犯人の未知の能力に読んでいてとてもドキドキして楽しく読めました!!


また、伏線回収や優里を追い詰めて殺そうとするときに、完全犯罪のピースがだんだんと揃っていく感じがかなり気持ちいい。


本書では名言だと思うセリフが幾つもあり、特に『だからって、殺しちゃ、ダメだろ』『私は今日、死にましたって、言え』『上なんていない、いるのは下だと思い込んでいる奴だけ』は文章なのに登場人物の感情が伝わってきました。


この物語で垣内側に共感できた人は陰キャ、八重樫側に共感できた人は陽キャだと思います😂


教室が、ひとりになるまで (角川文庫)

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