彼女はもどらない
降田天

2014年に『女王はかえらない』で第13回『このミステリーがすごい!』大賞の大賞を受賞し、ミステリー作品に定評がある降田天さん
このページではそんな降田天さんの作品の1つである『彼女はもどらない』のネタバレ、考察を含む内容解説をおこなっていくので
未読の方は一度読んでからご覧ください!
登場人物
・綾野楓 (あやの かえで)
→児童雑誌の編集者であり、期待のエース
・悟 (さとる)
→楓と事実婚している夫
・ソラパパ
→子供のコスプレ衣装を百均で作るというブログで今、人気が出ているブロガー
・棚島 (たなしま)
→国家公務員として日々、激務に追われながら妻に代わって一人で娘を育てている
・深雪
→棚島の妻
ベランダから転落し、現在は病院で寝たきりの生活を送っている
・水峰 (みずみね)
→楓が勤める編集者の部下
楓を尊敬し、慕っている
・夢乃 (ゆめの)
→高校の非常勤講師をしている棚島の妹
実家に預けている棚島の子供の面倒をよく見ている
・利一 (りいち)
→棚島が勤める職場の元同僚
棚島と親しい間柄であったが、訳あって国家公務員を辞めてしまう
しかし、その後も深雪や子供とも家族ぐるみの付き合いを行っている
・崎守 (さきもり)
→フリーライター
雑誌の企画の持ち込みで、楓が勤める編集社に訪れる
・中谷繁 (なかたに しげる)
→イラストレーター
以前、楓とともに仕事をしていたが雑誌をリニューアルした際に契約を打ち切られた
・今西司 (いまにし つかさ)
→楓が中学生の頃に習っていたピアノの先生
楓の母に招かれた夕食会で酔った勢いから、楓に性的行為を働いてしまう
同一人物
棚島=悟=ソラパパ
→物語の序盤で、棚島が子供の衣装を作って投稿しているブロガーの『ソラパパ』だと分かるのだが、物語の後半に棚島と悟が同一人物ということが分かる。
つまり楓は皮肉なことに、毛嫌いし批判していた人物と生活を共にしていたということになります。
利一=崎守
フリーライターである崎守は利一のことであり、企画の依頼で棚島にメールを送る際にあえて自分に素性は明かさず、崎守というペンネームで棚島とやり取りを行っていた。
棚島の行動
→深雪が事故で寝たきりの状態になり、仕事と育児のストレスが溜まっていた棚島。
そんな中、ある日、友人に代わって参加した合コンで出会った楓と恋人関係(不倫)になってしまう。
楓には深雪がいることを伝えず、仕事のある日は東京にある楓の家に住みつき、2週間に1度、仕事が休みの週末に千葉にある実家に戻り、娘に会いに行くという綱渡りな生活を送っていた。
楓の行動
→数々のストーカー被害によって精神状態がおかしくなっていた楓。
そんな中、悟の職場からかかってきた電話で『悟の妻が病院で亡くなった』ことを知らされる。謎を確かめる為に向かった病院で悟を見たときに自分が騙されていたことに気づく。
そんな状態の中、家に帰る途中に楓の消し去りたい過去を引き起こした人物(今西)に遭遇してしまい、過去の記憶が蘇り16年前と同じく今西を刺してしまうのであった。
楓に起きた数々の嫌がらせの犯人
①過去のブログがネット上に晒される
→犯人は棚島
自身のブログ宛に来た色葉(楓)のコメントに腹を立てた棚島は仕返しをしてやろうと、色葉のSNSを調べ上げ、過去の痛いブログを見つける。
そして、その内容をコミュニティサイトへ晒すのであった。
②SNSでのしつこいコメント
→犯人は中谷
楓のナウドゥのフレンドである『いちごバンビ』は水峰のアカウントだったが、水峰と付き合っていた中谷はそれを利用して、アカウントを譲りうける。
そして中谷は、契約を打ち切られたことによるちょっとした復讐を楓にしようと、SNSでの嫌がらせを行うのであった。
③ゴミを漁る、郵便物を盗む、ストーカー行為
→犯人は夢乃
兄の棚島が浮気をしていると知った夢乃は浮気相手がどんな女か探るために楓を尾行し、ゴミを漁ったり郵便物を盗んだりしていた。
利一の行動
→深雪のことが好きになっていた利一は、棚島と深雪の夫婦仲が上手くいってない様子を見る度に『俺ではダメなのか』と思っていた。
そんな感情の中、ある日、夢乃から棚島が浮気をしていると知らされる。
そうして楓の存在を知った利一は深雪から棚島を切り離すべく、仕事を通して楓とソラパパ(棚島)につながりを持たせ、棚島の嘘が暴かれるように仕向けたのであった。
読んだ感想
→最後にフリーライターの崎守が棚島の友人の利一だったことには物凄く騙されました😝
この本を読んで『化け物はきっと誰の体の中にもいる。境界線は皮膚一枚だ。』という最後のページの利一のセリフがとても印象深く、確かに人間誰しも、心の中に化け物が潜んでいると思います。
そんな化け物が出てしまってからではもう遅い。
だから、色々考えて、常に後悔しない方を選択して生きていきたいと思いました。